劇団ウィルパワー 第21回公演オムニバス企画『雨音協奏曲』を終えて

お世話になっております。笹森です。この度は、劇団ウィルパワー第21回公演 オムニバス企画『雨音協奏曲』にご来場並びにご協力いただきありがとうございました。劇団員という立場ではありますが、今回の公演を振り返っていこうと思います。

 

【箱の中の海】

 昨年の4月に文化創造館で披露した演目の再演となります。当時、2回とも観させていただいたのですが、終わった後に一番に思った感想は「絶対自分が役者やらない雰囲気のやつだ!!」でした。特に3人が溺れるときのような幻想的な雰囲気がすごすぎて、引き込まれて、自分とは違う世界だと半分諦めに近い何かを感じていました。

 そこからなんやかんやあり、川元として公演に出ることになりました。まじか。作品は好きだし、すごく光栄だけどできるのか。他の演目の役者さんも決まって、上手い人たちばかりで、自分の経験値と技術のなさで後々悩むことはわかってたのですが、ほぼ秒で川元として選んでもらえた嬉しさが勝ちました。

 前回は海野も川元も女性でしたが、今回はどちらも男性ということで、作品の印象が変わったなと演じながらも思っていました。同じ川元を演じたらん子さんが箱海の稽古にもきてくれてたので川元のキャラクターをつくっていく(?)のもゼロからではなかったので割と気負わずにできました。マルチバース川元。

「この場面はこんな演出がつけられていたんですよ〜」みたいな話もしたいのですが、それが作品の答え合わせみたいになってしまう気がするので言わないでおきます。たぶん観てその時思った内容が正しいです。何も思ってもらえなかったら僕の力量不足です。

 役者というものに慣れていないので、川元という役を演じるにあたり、毎日彼がどんな人間なのかを考えてました。もちろん演出の鎮西さんとのイメージのすり合わせはありましたが、自分のイメージとしては「一緒にいて楽しいやつ」でありたいなと思いました。あと、こういうの考える時間も楽しかったので、役者もいいなぁと思い始めました。

 川元の話ばかりしてしまったので、最後にこの作品で一番好きな場面の話を。川元がいなくなったあとに海野と山根が話す場面が一番好きです。「なんにも出来なくなるんです。やめるんです。全部ここに置いて、別の場所で生きていくんです。」童貞いじりは置いておいて、山根から海野にかけた言葉の中で一番届いたのはこの言葉なんじゃないかなって思っていて、試すような、一番傷付くような言葉だからこそ、海野からは飄々とかわすような言葉じゃなくてちゃんと本音が返ってきたんだと思いました。なんか好きなんだよなぁ、あの場面。

  公演が終わってからは、「川元は海野と山根の何かをちゃんと繋ぐことができたのかな」ってずっと考えてました。

 

【貧血鎮魂歌】

 台本読みの時はコメディだと思ってましたが、本番が近づくにつれて、「あ、これホラーだ」と思わせられた作品でした。「思った」じゃなくて「思わせられた」。思い知らされた?

貧血は今回の公演の中で一番ギミックの多い作品でした。ベンチは棺桶になってるし、戦う道具もあるし、コジマだし。棺桶すごくないですか?棺桶なのに棺桶以外の機能もついているんです!!本物以上と言われるのも納得の棺桶。

あと、同じ舞台上でも優志井のいる場所が違うというのが個人的に好きな演出でして、明らかに棺桶が存在してるのに抽象的な演出も存在してるのよくないですか?

3作品の中で一番役者の表情が武器として使われていた作品だと思いました。編田は泣くし、優志井は頼りないし、月世は怖いし。表情をちゃんと出せるって武器だなぁ…

そして、この作品には音響補助として参加しておりまして、本番は音響操作をしていた大屋さんのスタンドとして端っこにいました。自慢なんですけど、最後の照明が赤くなったタイミングの曲は僕がかけました!!あのあたりはそれぞれきっかけが少しずつ違うので大変でした。あの瞬間は岩谷さん含め3人の意識が一つになった気がします(個人談)

 

【雨音協奏曲】

この作品も台本読みからずっと見てきた作品ですが、キャストによって全然印象変わりますね。個人的にも今回の配役が一番しっくりきてました。「男女それぞれの強気と弱気が本体のまわりでパタパタ動く」というのは読み取ってはいたのですが、実際に動きを加えてみると可愛い作品になったな…というのが感想でした。ベンチ(棺桶)があることもおり、動ける範囲も限られていましたが、それはそれで良い制限になったのかなと思ってみてました。

この作品は、食品会社の女性と介護職の男性の過程の話だと思っているのですが、こんなにもかわいい作品になるんだなって驚きました。特に、2人が横になる場面をみて、「あれ?もしかして水野と小桃って可愛いのでは…」と思ってました。しかも稽古でその場面やるたびに。

だって水野はアラフォーなんですよ。なのに、あんなにシュンとした顔して、しいたけで笑ってズルくないですか。という一つ一つの表情つくるの上手いんだよなぁ。シゲさんちゃんと人のこと見てるからそういう表情も上手いんだろうなぁ。

出はけの関係で基本的に横から見ておりまして、あんまり大声で言いたくないんですけど、小桃の横顔見て何回かどきっとしましたよ。「さっきおんなじ役者さんがポンコツの優志井先輩をやってたって本当???」ってなるくらい。絶対違う人だよあの人。だから最後の「一緒に」もめっちゃ好きなんですよ。

  強気と弱気。稽古で代役を何回かやったんですけど、あれ結構体力いりますからね。前後運動とか、息が上がらないまま演技してた役者さんすごいですから。水野と小桃の気持ちを表してるので、後ろの4人がすっごい表情豊かなんですよね。本番は袖で聞いてたんですけどアドリブ入れられてるところ結構違くて面白かったです。

 

【オムニバス企画『雨音協奏曲』】

今回はこれまで話してきた3作品をオムニバス企画としてお届けしてきました。本公演は季節を巡るいい公演だったなと当事者ながら思っております。唐突に季節の話をしましたが、『箱の中の海』は「秋(中間発表前)」、『貧血鎮魂歌』は「冬(吹雪)」と劇中で明確に表現されています。続く『雨音協奏曲』はどこら辺に季節感があるかなという話ですが、なんやかんや、なんやかんやを重ね、2人に「春」が訪れる…のでござる。なんちゃって。

若干こじつけみたいですが僕は季節を巡る公演だと思ってます。細かいところはいいんですよ、個人の感想なんで。ちなみに順番は「この順番が良くない?」みたいな話で決まってた気がします。

また、パンフレットをご覧いただいた方はご存知とは思いますが、キャストとスタッフの雨に関する質問の答えが掲載されております。ちなみに笹森の欄は風情のかけらもない個人の趣味丸出しになってます。というのも、あまり雨に対してあまり嫌な思い出もなく、どちらかというと「雨の日だからいいことありそう」と思うくらい雨が好きなんです。サッカーの大事な試合も大学の受験日も雨だったので、今回初めての大事な舞台が雨に関係する公演で良かったなと思ってます。

 

【初公演は米倉でした…】

大学で演劇サークルに所属していたものの、役者をほぼやらず、制作、音響または舞台監督といった裏方の人だったため、今回ちゃんと役を演じるのは初めてでした。まぁ役者やらなかったのも「役者頑張るぞ〜」みたいな話を鼻で笑われたのがきっかけで自信なくして腐ってただけなんですけどね。なので演出に「箱の中の海」のお話をいただいた時に嬉しさのあまりほぼ秒で決めた自分には驚きました。笹森はチョロい。呪いは簡単に消える。

ただ、裏方も大好きなので次の公演で何をしてるかは良い意味で分かりません。何をするにしてもとしても皆様に良い舞台をお届けする所存です。

 

【おわりに】

改めまして、この度は「劇団ウィルパワー第21回公演 オムニバス企画『雨音協奏曲』」にご来場並びにご協力いただき誠にありがとうございました。

公演をとおしていろんな方の感想をいただき、本当に、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。「おもしろかった」や「〇〇と思った」のひとことがこんなに嬉しいとは思ってませんでした。

若輩者ではございますが、今後ともよろしくお願いいたします。

 

笹森 しゅん